亀田大学

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講義01 ベーシストが読む"空気"とは?

2013/3/19
ベース・マガジン4月号連動

亀田のベース・ラインを解説!

学長がこれまでに関わってきた数多くの作品のなかから、読者の方々、特にベーシストにとって興味深いと思われるベース・ラインをピックアップして解説します。

「本能」
music by 椎名林檎

◎ベース・ラインの成り立ち

今回紹介するのは、椎名林檎さんが1999年にリリースした「本能」のなかから、イントロ、そしてAメロの一部です。まずは1小節から4小節までのイントロ。このフレーズは、まさに直感で思いつきました。椎名さんのメロディを聴いた瞬間に"このメロディをなぞりたい!"って思ったんですよね。そこからは迷わずすぐに録りました。4小節目はチョーキングで攻めています。これはA7の♯9の響きになるんですが、そのあとのサビに飛び込むために、スライドなどで"ブーン!"って弾くのではなく、チョーキングするっていうアイディアが思い浮かんだんです。そもそも、椎名さんとのセッションでは、スタジオでレコーディングするときも初期衝動を大事にしたいことと、まだProToolsを導入していなかったことから、デモの段階では鍵盤で弾いた打ち込みだったんです。頭で鳴ったイメージを鍵盤でなぞらえて音を鳴らし、それを現場で生に差し替える流れでこのフレーズは生まれたんです。

◎演奏する際のポイント

通常、音を伸ばすとき、無意識的にヴィブラートをかけたり、ニュアンスを付けようとすると思うんです。実際、"あのニュアンス、すごいね!"なんて周りから言っていただくんですけど、実はこのフレーズに関してはヴィブラートをかけていないんです。歌い手の林檎さんも同じように音を伸ばしている部分なので、僕がニュアンスを出しすぎてしまうと重なり合ったときにピッチが気持ち悪くなってしまう危険性があるんですよ。ヴァイオリンやチェロのように、音価をしっかり伸ばすために弦を揺らして粘りを出してはいるのですが、いわゆる"歌心"として大きくヴィブラートをかけるという行為はしていない。そのかわり、ライヴではチョーキングして半音くらい音を上げたり、タッピングを加えたり、わざと極端に演奏していましたね。それはライヴ映像などにも収められているので、機会があればチェックしていただきたいです。そのあたりのニュアンスについは、歌や周りの音を聴いて判断しています。周りを聴くっていうことが大事なポイントなんです。
あと、この曲では、リズムがハネている点にも注目です。チョーキングのフレーズでも、ウラを感じて、ピッキングする直前の"ッ"っていうタイミングを意識してほしいです。そのほかのワンポイント・アドバイスとしては、成功率が低い部分は、実は着地したあとの1音目だということ。この音をどれだけタイトに弾けるかっていうことが一番大事なんです。4小節から5小節にかけては、開放弦を交えることによって、ハイ・ポジションから次のロー・ポジションに移動するまでの時間をかせいでいます。

次回「 脱・初級のベース演奏能力向上セミナー」4/19更新

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その人にしか出せない"声"がある(亀田)

亀田
ベース・マガジンで始まった連載企画『亀田大学 低音学科』なんですが、そのなかにある『亀子の部屋』というコーナーでは、第一回目のゲストとしてぜひ目黒君を呼んでくださいって、僕がリクエストしたんです。
目黒
ありがとうございます。グランプリをいただいた後の話をすると、僕の曲をプロデュースしてくださるということで、元の音源となるデモを送ったんです。その音源では、ドラム以外のすべてのトラックをベースで弾いたので、ウワモノもすべてベースで構築されていて。
亀田
そうそう。送られてきたProToolsのデータを開いたとき、"トラック1はベース、トラック2もベース、そしてトラック3......もベース!"っていう感じだった(笑)。それが10数トラック入っていて。僕はそこに鍵盤でコードを付けて、エレピを入れたりして作業を進めたんです。しかも、その音源と同時に、目黒君から"生まれ育った北海道の大地をイメージしました"っていう、泣かせるメッセージが届いたんですよね。
目黒
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僕の地元は、とにかく大地が広くて奇麗な街なんです。しかも、人口よりも牛の数のほうがはるかに多いっていう街で(笑)。学生時代はアンプに繋いで大きい音で鳴らしたり、ドラムセットを叩いても周りから苦情がこないっていう環境で楽器を弾いていたんですよ。そのなかで、今回のメロディは専門学校の時代にすでに思いついていたものだったんです。そして、『亀田杯』の"自由演技"として発表された課題曲のテーマが"家族"だと知ったときに、"これしかない!"と思って。だから、ファイナルに臨むにあたっては、迷いがまったくなかったんですよね。
亀田
僕はというと、今も話したメッセージも踏まえて、北海道のことを想像するわけですよ。で、例えば"もしかして、オーロラみたいな響きの音色が合うんじゃないか"って想像して、情景が浮かぶようなものを音で表現しようと考えたりしました。そして、ある程度完成した段階で、目黒君に聴いてもらおうと思ってデータを送ったら、なんと目黒君、それにインスパイアされてさらにベースを弾き直してきた(笑)! しかも、"当社比120%増し"ぐらいで磨かれて返ってきたわけ(笑)!
目黒
"今の段階で申し訳ないんですけど、このパートを追加してもいいですか?"って、新たなメロディのベース・ラインを録って送ったら、それを合体させてすぐに送り返していただいて。
亀田
そう。そういう意味では、データ上でのやり取りではあったものの、セッション感覚でしたね。アレンジに関しては、インストであろうと歌モノであろうと同じ感覚でやっているので、今回の作業も難しいは思いませんでした。僕が今までに出会ってきた素晴らしいヴォーカリストの方々と同じように、目黒君のベースを"歌"だと捉えてアレンジさせていただいたっていうことなんですよ。歌い手さんは、その人にしか出せない"声"っていうものをそれぞれ持っていて。目黒君には目黒君にしか出せない、"ベースの声"がある。それに合ったアレンジをそれぞれで考えていけばいいんです。

"僕の音""僕のフレーズ"っていうのを確立させたい(目黒)

亀田

目黒

亀田

目黒


亀田

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"支える"っていうことに関してはどういう練習をしたんですか?

実は僕、あまりクリックを使って練習をしたことがなくて......。

あっ、きた! 超絶的にうまい人が必ず言う言葉(笑)!

(笑)とにかく人とプレイするときに、
"この人が歌いやすいようにはどうすればいいか"って常に考えていると、音符の長さや粒立ちが自然と気になるようになって。

僕が20代の頃は、自分でカリキュラムを組んで、ストイックに練習していました。そのなかでも、例えば"こことここにソの音がある"っていうことを探りながら、音階を上下する練習をずっとしていましたね。もちろん、クリックを聴きながらで、テンポは、60、80、100からと、ゆっくりから始めて。しかも、右手のピッキングは2フィンガーでオルタネイトをキープするという。とにかくストイックで、全然自由じゃない状態で弾くわけ(笑)。

目黒
そういった家での練習に加えて、実際に経験しないとわからない部分ってありますよね。ライヴの音源を聴き返して、"やっぱりノリが軽いな"って気付くこともありますし。僕の場合、札幌のUKロックの専門店で毎日演奏していたので、"こういうことをやると、フロントマンはどういう顔色をするかな"とか、そういうことを実際に体感させてもらったんです。あとは、ライヴだと、どうしても緊張したり気が大きくなってしまって、良く見せたいって思ってしまうこともあるんですけど、現場で毎日弾くことで、"見た目はホットでも心はクール"っていうのを学びました。加えて"前ノリ気味に弾いてみよう"とか"後ろノリで弾いてみよう"って試したりしていましたね。
亀田
えっ!そんなこともできるの? すごい! 僕の悩みを聞いてもらってもいい(笑)? "前ノリ、もしくは後ろノリで弾く"っていうことに関して僕ができるのは、"音の長さのコントロール"なんですよ。つまり、音を発するタイミング自体は、常にジャストで取っているんです。で、音符の長さをたっぷり使うことで、あたかも後ろノリのようなニュアンスを出したりするんです。逆に、前ノリに関しても同様で、音の始まりはジャストで考えています。

目黒



亀田



目黒

僕もそれが表現できているのかわからないですけど、後ろノリ気味で弾くと、セッションのリーダーから"もっと前に行って!"って言われて"あ、これは重すぎるんだ"って気付くこともありました。いろんなニュアンスでやってみて、どういう感じになるのかなって実験しながらやってましたね。

大事なのは、どんなにノリノリで弾いていても、必ず周りの音を聴くっていうことですね。結局、僕はベースの役割を捨てちゃダメだっていつも思っていて。目黒君の言うように、"心がクール"っていう部分は絶対に崩しちゃけないと思うなぁ。目黒君は、今後どんなことをやっていきたいと考えていますか?

とにかく僕は、いろんな方々と一緒に音を鳴らしたいので、レコーディングの現場はもちろん、ツアー・ミュージシャンとして活動していきたいです。そして、"僕の音""僕のフレーズ"っていうのを確立させたいですね。

亀田
国内に限らず、はじめから世界を視野に入れた働きかけをしていってもいいかもしれないですね。もちろんサポートをすることも素晴らしい仕事ですが、"目黒郁也のベースの音が欲しい"って思われてサポートに呼ばれるような存在になってほしいな。あと、今後は『亀田杯』から、いろんな関係性をつなげていきたいですね。そういえば、『亀田杯』のファイナリスト6人が集まって曲を作ったりしているらしいですね?
目黒
そうなんです。また集まる機会を作ろうと思っています。『亀田会』っていうことで、曲作りだけでなく食事をする機会を設けたりしたんですよ。
亀田
コンテストをやって、その後もファイナリスト同士が交流を深めるなんて、普通はない関係性ですよ。しかも、曲作りを始めちゃうなんて素晴らしいです。僕はそういった活動を全力でサポートしていきたいです。で、サポートさせてほしいのと......僕もその『亀田会』に呼んでほしい(笑)。
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次回「亀子の部屋」4/19更新

ベース・マガジン2013年4月号 3月19日発売
http://www.rittor-music.co.jp/magazine/bm/

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