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講義10 気合いのベース・リフに挑戦!
2013/12/19
ベース・マガジン1月号連動
亀田のベース・ラインを解説!
皆さん、こんにちは!亀田誠治です。この連載では、僕がこれまでに手がけた作品のなかから、ベース・プレイをピックアップして解説します。10回目となる今回は、東京事変の「OSCA」における、楽曲を印象づけるメイン・リフを披露します。シンプルな音使いですが、音程が大きく動くためにとてもダイナミックな印象を与えるフレーズです。これを弾き切るには、勇気と気合いが必要!そんなプレイに挑戦してみましょう。僕のプレイを観て、僕の気合いを感じてください!

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「OSCA」 |
◎ベース・プレイの成り立ち
今回紹介するのは、「OSCA」のイントロのリフです。このリフは何を隠そう、元は浮雲君のギターによるリフだったんです。アレンジする際に"亀田さん、弾いてみてください"っていうリクエストがあったので引き受けたのですが、イントロを弾き切るのはとても大変でしたね(笑)。レコーディングしたときはスタジオでの一発録りだったんですが、ヴォーカルも一緒に演奏した記憶があります。さらにクリックはまったく使っていなくて、曲の後半ではスピードが上がっていきます。この曲は、ツアーでもやらなかった公演がなかったっていうくらいの人気曲だったんですが、速くなる後半部分は、もう弾けないくらいのテンポになることもありました(笑)。そういったときは気合いで弾く!そういう意味で、フィジカル面では体力が必要ですし、カウントからいきなりメインのリフを弾くので、メンタルの強さも求められるわけです。それに備えるためにも、"楽器が体の一部"となるよう、常日頃からベースと親しんでおくことが大事かもしれませんね。
◎フレージングのポイント
このリフは、E7のコードに対してルート音とm3rdの音を弾いているのですが、ビートルズの「カム・トゥゲザー」のように音程が大きく移動します。構成音としては、いわゆる"ジミヘン・コード"ですね。ピッキングについては、空ピッキングを入れてオルタネイトをキープしながらリズムを感じることが大事です。E7の音からGに移動する間でもビートを意識することが大事で、長い距離のスライドを行なう途中でもゴーストノートを入れるようなイメージで、常に頭のなかで16分のリズムを鳴らしながら弾いています。そのリズムを体得するために、まずはルートの1音だけでピッキングの練習をすると良いでしょう。そうやって、オルタネイトのストロークを意識するのです。あとは、ひたすら弾き続けること!
次回「脱・初級のベース演奏能力向上セミナー」1/18更新

"曲の一部になろう"と、作曲する感覚でベースに取り組んでいる。(亀田)
- 亀田
- 奥野君は8ビートを弾く時も基本的に2フィンガー奏法、いわゆる"指弾き"なんですが、すごく丁寧でキレイに弾きますよね。
- 奥野
- ありがとうございます!でも、以前にも亀田さんがそう言ってくださって嬉しかったです。8ビートって、ピックで弾くほうがツブ立ちがはっきりして良い場合もあると思うんですけど、やはり、2フィンガーだからこそ出る"うねり"や"フレージングの歌わせ方"も魅力だと思って。だから、8ビートでもあえて2フィンガーで弾くために、かなり練習しました。人差指と中指の長さは違うし、表と裏の強さがどうしても違ってくるから、タイトに弾くためには、しっかり練習しないといけなくて。それこそ、クリックを使って練習していた時期もありました。基礎練って、常にやらないといけないというわけじゃないとは思うんですけど、本当に一時期だけでも集中して練習すれば底力がつくから、のちのちいろんな面で役立つと思うんです。
- 亀田
- 基礎練は僕もやってました!練習をすることで、まずリズムに対して自信がつくんですよね。それによって誰と合わせても対応できるし、ある程度練習を積むことで自分のリズムの基準が見えてくるからこそ、"この人とセッションしておもしろい!"とか、周りを見て感じ取ることができると思うんです。
- 奥野
- あと、"合ってるのかな? 弾けてるかな?"って迷いながら弾いていたら、良いグルーヴは作れないし、まずは自分が気持ち良くなるためにも、基礎練は必要かなって思います。
- 亀田
- そうそう。そのための練習なんですよね。あと、奥野君の個性を語る上で、"多弦ベースを使っている"っていうこともひとつのキーワードだと思います。
- 奥野
- そうですね。1弦目にハイCの弦を張った5弦ベースを使っていたんですけど、和音を弾いたり、ギターのようなフレーズを弾けたりするメリットがあって。さらに、下の音も欲しくなって、今は6弦ベースに落ち着きました。加えて、7弦ベースも使ってますけど、今まで思いつかなかったフレーズも弾けるようになるし、プレイの幅が広がるんですよね。"こういうプレイもいいかも!"って、楽器によってアイディアが思いつくんです。
- 亀田
- あと、アンサンブルとしてのキーワードとしては、"ピアノ由来"っていうか、その曲に向けて考えたベース・ラインを作って弾いてるってことなんですよね。いわゆる"リフ"からできたベース・ラインではなくて、アレンジ上、こういうフレーズがここに必要であろうっていう発想でそこに存在している。存在価値があるフレーズというか、シンキング(考える)ベースを実践していると思います。
- 奥野
- やっぱり、歌ありきの中で、最大限に引き立つベースはなんだろう?っていうことを考えていかないとだめだなと。そういうのはすごく考えています。
- 亀田
- 僕も同じなんですけど、プロデューサーやアレンジャーの目線というか、曲全体のなかで"曲の一部になろう"っていう、コンポーズ(作曲)する感覚でベースに取り組んでますよね。曲の一部として、ベースのサジ加減を濃いめにしたり薄味にしたりする。ベースだけで目立ってやろうとは思ってなくて、言い方を替えると、良いフレーズならベースじゃなくてもどんな楽器で弾いても良かったりする。そのなかで、ピアノ・トリオの場合は、曲のメロディのパーツとしてどれだけ曲に貢献するかっていうことを考える。そうすることで、大胆なオブリみたいなフレージングもできるし、ルートしか弾かないっていう逆の選択肢もできるんですよね。
ライヴにおいても、常にチャレンジを続けて表現したいんです。(奥野)
- 奥野
- あと、このバンドの編成自体が、僕のスタイルを育ててくれているって思うことがよくあります。ピアノ・トリオじゃなかったら、こういったスタイルになるとは思わなかったし、それは恵まれた境遇というか、僕の突き詰めるべき道だし、僕にしかできないことだと思って。
- 亀田
- "ギタリストがいない"っていうピンチをチャンスに変えた、みたいな。
- 奥野
- まさにそのとおりです。困難ではありますけど、乗り越えて僕が道を切り開いていきたいなと思いますね。初期はそれを身体で模索しながら"何か違うけど、何が違うかわからない!"っていうなかで探究していた部分がすごくあって。結局、最終地点は気持ち良いか気持ち良くないか、良いと思えるか思えないかっていうところだと思うので、そういうところでは根本的な部分は変わってないのかなって思いますね。
- 亀田
- 作品としてはポップで歌モノのアプローチなんですけど、根っこにあるのはメンバーが納得したサウンドやグルーヴが絶対条件で、それが表現されるまで高みを目指すっていう......本当に骨太なバンドなんですよね。だから僕もプロデュースを担当したときは、ホントに仕事のしがいがあると思いました。そして、以前、僕と一緒に制作するなかで模索したことを、今でもバンドのなかで続けていることがすごく嬉しいですね。例えば、打ち込みのループといったテクノロジーを使いつつも、基本は3つの楽器だけで伝えるっていう、楽器編成に縛られていることの意味っていうのを、メンバーだけじゃなくて観ている人にも伝わるようにしていること。
- 奥野
- ピアノのループ・フレーズを活用したり、ストリングスを入れたりしたこともあって、それもひとつの形態としてライヴを行なうこともあるんですけど、どうすれば3人の楽器だけでやれることを最大限に活かせるだろうっていうことは考えていますね。その結果、例えば、"アンプラグドでやってみよう"っていうアイディアが生まれてきたりするんですけど、そんな思いがけないことを振られても、メンバー全員、すぐに対応できるんですよ。
- 亀田
- そういった、"クリエイティブな無茶ぶり"に対して、音楽的に順応できるわけですね。実際、WEAVERのみんなは"できない!"っていうことは決して言わないですよね。
- 奥野
- むしろ、そこから楽しみを覚えるようになったっていうか。ライヴにおいても、常にチャレンジを続けて表現したいんです。あと、ライヴの空間でしか観せれないものを作ろうって考えていて。例えば、間奏で仕掛けを作ってみたり、細かい部分のフレーズを変えてみたり、そういった意味でお客さんを楽しませることができるバンドでありたいなって考えてます。
- 亀田
- 今、奥野君が言った"お客さんを楽しませる"っていう言葉は、表面だけを抜き取ってしまうと軽い言葉だと捉えられてしまうかもしれませんが、その根底には、"自分たちが納得するまでやる"っていう意志が含まれていますね。
- 奥野
- 良い意味でお客さんを裏切りたいんです。ピアノ・バンドって、キレイなイメージやマジメなイメージで見られるかもしれないですけど、"そんなこともやっちゃうんだ!"って言われるようなライヴができるバンドになりたい。そういう意味では、良い裏切りとともに、お客さんを引っ張っていけるようになりたいなって、すごく思っています。
- 亀田
- そういった思いがあるからこそ、"ミュージシャンズ・エゴ"には聴こえないとし、その向き合い方がかっこいいんだなぁ。良い意味で裏切ったとしても、お客さんに楽しんでもらうっていう範囲から絶対に逸脱しないんです。あと、僕のことなんですけど、僕自身、残された人生のなかで、最近は周りの物事をシンプルにしていこうと思っていて、ベースの機材についても4弦ベースだけでやってきたんです......。でも、奥野君と話をしていて、多弦ベースっていうものに関して非常に興味を持ちました 。なので、2014年は、奥野先生(笑)に多弦ベースの買い方から教えてもらおうと思います(笑)。
- 奥野
- あはは(笑)。実は2014年の1月から半年間、イギリスに留学して、向こうの音楽に触れようと思っているんです。そこでは逆に、僕は4弦ベースを弾こうと思っているんです(笑)。

次回「亀子の部屋」1/18更新

ベース・マガジン2014年1月号 12月19日発売
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