亀田大学

亀田大学

- Category -

最終回 バラード曲でベースを歌わせる!

2014/2/19
ベース・マガジン3月号連動

亀田のベース・ラインを解説!

皆さん、ごきげんいかがですか?亀田誠治です。この連載では、僕がこれまでに手がけた作品のなかから、ベース・プレイをピックアップして解説します。最終回である今回紹介するのは、JUJUさんの「やさしさで溢れるように」です。この曲を題材に、バラード曲であってもハイ・ポジションを積極的に活用することによって、ベース・ラインで歌うことができるという、そのからくりをご説明します。

「やさしさで溢れるように」
music by JUJU
『What's Love?』ソニー・ミュージック アソシエイテッド/AICL-1996

◎ベース・プレイの成り立ち

今回はJUJUさんの「やさしさで溢れるように」を取り上げます。この曲はバラードにおけるアプローチに関して、僕にとってのプロトタイプと言える曲なんです。歌モノのなかで、ハイ・ポジションでフレージングしていくことに確信を持てたというか、"ここまで攻めても大丈夫!"という自分のスタイルを確立できたんです。このベース・ラインはとても気に入っていますが、そもそもは、ストリングスなどをアレンジしていくなかで、このベースの居場所を見つけました。ですので、ベース・ラインありきで編曲したわけではなく、むしろ、ベースのフレーズは一番最後に考えながら当てはめていったんですよ。いくつかの偶然がありつつも、基本的に熟考して作ったベース・ラインなんです。ちなみにこの曲は、最後のサビなど、ベース的な聴きどころが満載ですね。

◎フレージングのポイント

この曲のフレージングについて、まずひとつ目のポイントは、歌の合間を狙ってベースが勢いよく飛び込んでいく、ということです。1小節4拍目裏や4小節がそれで、音階が上がっていくイメージでフレーズを考えました。そして、5小節目ではD♭のコードに対するM7thの音を弾いていますが、これが"切なさ"につながっています。こうやって、歌の隙間を狙ってベース・ラインを動かすんです。特にここでは"歌のメロディと少しカブッてでも、歌を押し上げていくんだ!"っていう意識で歌を引っ張っていて、景色の変わる瞬間を意識して弾いていますね。
ふたつ目のポイントは、先ほども話した4小節の最後で、ストリングスのフレーズとユニゾンしていることです。自分ひとりだけが動いているんじゃなくて、ほかの楽器と一体になって歌を支える。そうやって次への盛り上がりを作っていくんです。ベースが自ら指揮者のように盛り上げることで、歌も盛り上がっていく......そういった気持ちで弾くという発想ですね。このフレージングに関しては、基本的にFmのペンタトニックの音使いになります。また、ストリングスが盛り上がることでベースが印象的に聴こえる一方、逆にストリングスを引き立たせるアレンジにもなっています。

ベースひとつで彩りが変わることを感じることで、ベースを弾くことがより楽しくなる。(亀田)

亀田
TOKIEさんといえば、アップライト・ベースの印象も強いですが、実は最近、僕もウッド・ベースを習い始めたんです。ウッド・ベースはTOKIEさんに教えてもらおう(笑)!
TOKIE
いやいや、私も自己流なんで(笑)。
亀田
基礎をしっかり学んだら、僕もゆくゆくは自己流にしたいなと思っているんですけど、さすがに、これまでに弾いたことがなかったので少しずつ習っているんです。
TOKIE
どんなことを教わっているんですか?
亀田
弓を返す時に音を切らずに弓を擦り続けるとか......。
TOKIE
コントラバスを始めた当時は、私もそういった練習をひたすらしていました。あと、練習するときは鏡を見ながら、弓が下がらないようにフォームや動きをチェックして。そうやって、音を切らないで弓の動きを返せるようにしたりしていましたね。あと、中学生の頃はブラスバンドをやっていたんですけど、コントラバスはふたりか、多いときで3人、加えてチューバがいる編成だったので、とにかくピッチ(音程)を合わせる練習をひたすらやっていました。
亀田
ピッチは大事ですよね。僕の夢は、将来、自分のアレンジするストリングスのセクションのなかで、僕自身でコントラバスを弾くことなんです。自分の生きている間にマスターできるかわかりませんが(笑)。
TOKIE
ストリングスの編成ではコントラバスがひとりだと成り立たないので、そのときは私にもやらせてください(笑)。最近組んだ、THE LIPSMAXという女性3ピースのバンドでは、アップライト・ベースだけでプレイしているんです。そういえば、今回の対談(ベース・マガジン2014年3月号に掲載)で"音の長さ"について話題になりましたけど、それを認識した出来事が以前にありましたよね。布袋寅泰さんがロンドンでライヴをされたときに(2012年12月18日のロンドン公演)、私は中村達也さんとリズム体でご一緒させていただいたんですけど、その直後に、亀田さんは高橋まこと(d)さんと、布袋さんのバンドでプレイされて。
亀田
そうそう。その時間差、わずか1ヵ月!
TOKIE
で、このリズム体同士では、一体何が違うんだろう?って考えたときに"音符の長さ"ってキーワードを亀田さんから言われたので、そこで"確かに!"って気づいて。
亀田
そういった、リズム・セクションの違いによる要素も含めて、フロントマンの方が楽しめるといいんですよね。布袋さんはまさに、僕とTOKIEさん、両方のグルーヴで楽しめるんですよ。確固たる布袋さんのリズム感覚があるからこそ、中村達也さんのドラムをTOKIEさんが包んでいる感じ、あとはタイトな高橋まことさんの8ビートに対しての僕のアプローチ、その両方を楽しんでらっしゃるんだと思うんです。だから、これを読んでいる方々に伝えたいのは、ベース・プレイひとつで彩りが変わるっていうことで、ベーシストはそれを誇りに思ってほしい......っていうか、それを感じてプレイすることで、ベースを弾くことがより楽しくなると思います。

今では、自分から"ここでコーラスをやってもいいですか?"って提案することもあります。(TOKIE)

TOKIE
ちなみに、最近、ベースを弾きながらコーラスができるようになったんです(笑)。
亀田
あれ?TOKIEさんはこれまでもやっていたような印象がありますが......。
TOKIE
いや、実は3年くらい前から、やっと両方が同時にできるようになったんです。それまで、コーラスはほとんどやってこなかったんですけど、最近になって自分から進んでやるようにして。
亀田
実際、歌いながらベースを弾くことって難しいですよね。
TOKIE
そうなんです。歌とベースとのリズム、もしくは歌とベースの音程もすべて違うことが多いですからね。
亀田
そのバランスを取るのが難しいのと、僕もよっぽどの場面ではやるものの、自分としては"自分が歌う前に、ベースとしてしっかりしていないといけない"っていう責任感もあるんですよね。
TOKIE
私も以前はそうだったんですよ!コーラスをやることでベースが"おざなり"になるのは嫌で、頑なに断ってきていたんですけど、今は全体を聴いて、"ここにコーラスがあったほうが絶対に盛り上がるよね"っていう視点で音楽を捉えるようになって。そこで、自分から"ここでコーラスをやってもいいですか?"って提案することもあるんです。
亀田
素晴らしい。それも学ばせていただきます(笑)。
TOKIE
(笑)とはいえ、練習すれば弾きながらできるようなことがありつつも、どうしても両立が難しい場合は、やはりベースを取るんですけどね。
亀田
ベースのプレイがおざなりになってしまうのはいけないけれど、コーラスが入ることで曲が華やかになったり、サビが楽しくなったり、結果的に音楽に貢献できるのなら、コーラスもできたほうがいいですよね?
TOKIE
そうなんです。そういったことも、以前はほとんど意識していなかったんですけど。
亀田
ポール・マッカートニーにしても、「デイ・トリッパー」のリフを弾きながら歌うってすごいですよね。
TOKIE
私が今まですごいと思ったのは、レベル42のマーク・キングですね。あれは信じられない(笑)。
亀田
確かにすごい(笑)。先日、ウィル・リーのライヴを観に行ったときに、ベースを弾きながら歌うことについて本人に聞いたら、ただひと言"enjoy!"って言われて。"あ、楽しめばいいんだ"と思って。
TOKIE
以前、エスペランサにインタビューしたことがあるんですけど、彼女は、ベースを練習するときに"歌いながら練習しなさい"って先生から教わったと話していました。楽器を始めた頃からずっと歌いながら練習していたので、それが当たり前というか、むしろ自然なことだったらしいですね。

亀田

TOKIE

亀田

習慣づけるっていうことなんですかね。そういった練習をしてみてもおもしろいかも。

きっと可能性は広がりますよね。

実際、歌ってみることで新しい何かが見えるかもしれませんね。その音楽の全体を聴くことを意識するっていう、今回のTOKIEさんの話は印象的ですし、それについては僕も相当鍛えてきたとは自負しているんですが、そこからさらに自分が"歌う"ことで、ベースの上達法について、何か発見があるかもしれないです。いやしかし、こういった話をベーシスト同士で話す機会はないですし、TOKIEさんの懐の深さなのか、今回は深いことまで話せたと思います。

TOKIE
私もそう思います。ほかのベーシストとは、こういう話はあまりしないですね。
亀田
それこそ、今までTOKIEさんと一緒に音を出したことはないですけど、共通するミュージシャンが間にいっぱいいたり、同じイベントに出ていたりするなかで、TOKIEさんのベースを聴いてドキッとする機会は多かったですし、心からリスペクトできる存在だと改めて思いました。もし共演できる機会があるなら、僕たちでしかできない"何か"がそこに生まれるような気がします。
TOKIE
そのときは、私が歌を歌いましょう(笑)!
亀田
弓で弾くことと歌うこと、今回出てきた宿題を全部やりましょう(笑)。
TOKIE
今回、こういう時間を作っていただいて、亀田さんとの未来が開けた気がしました。亀田さんとの共演が実現したとき、いろんなベーシストの方々に良い影響を与えることができたらいいなと思います。私も精進します(笑)。

ベース・マガジン2014年3月号 2月19日発売
http://www.rittor-music.co.jp/magazine/bm/

  • Back
  • More


Theme